まずは長谷川さんの自己紹介をお願いします。
初めから福祉を目指していたわけじゃないんです。若いころアルバイトを探していて、たまたま障害者支援施設の求人を見つけて、「やってみよう!」って思ったのがきっかけなんですよね。そこには、重い障害を持つ方や脳に損傷がある方など、いろんな利用者さんがいて、初めてのことばかりで本当に知らない世界。でも、その経験があったから福祉へのハードルがぐっと下がったんです。
その後、ゆうあいセンターに入り、気づけばもう20年以上になりました。最初は資格も経験もなかったけど、働きながら学んで、社会福祉士の資格も取りました。資格を取ったのは、娘が大学受験をしていた頃で、「父親として背中を見せたい」って思って一緒に勉強したんです。それは今でもいい思い出になっています。
事業所の倉庫には、作業用の商品が大切に置かれている。利用者さんが取り組む仕事を確保することも、職員の大切な役割のひとつ。
ゆうあいセンターについて教えてください
ゆうあいセンターは、障害を持つ方とそのご家族に向けて、就労支援や生活支援を行っています。理念は『利用者が快適で充実した毎日を過ごせること』『一人ひとりに合ったケアをすること』で、その実現に向けて活動を続けています。
就労移行支援事業・就労定着支援事業
一般就労を希望している障害のある方に、パソコンの練習やビジネスマナーを学んでもらったり、合同面接会に参加してもらったりしています。期間は最長2年です。うちでは知的障害のある利用者さんが多くて、特別支援学校を卒業したばかりの方が、就職する前にここで勉強することもあります。
企業との連携もとても大事にしていて、就職した後も職員が職場を訪問して定着支援を行っています。食品加工の会社やテーマパークなど、いろんな企業に就職されています。
就労継続支援(B型)事業
就職が目的の方ばかりではなく、利用者さんの「生活の場」としての充実をはかり、日中活動として作業をする場所です。利用者さんの心身の状態や希望に合わせてさまざまな作業をしています。今はメーカーさんから紅茶が大量に届いて、それを丁寧に検品して、数を数えて箱詰めして、みんな自分のペースで集中して作業しています。「自分がやったものが商品になる」っていうのが、利用者さんのやりがいになっていて、とても嬉しそうです。
かわいいパッケージが目を引く紅茶。昔からのご縁で、ゆうあいセンターが長く担当している箱詰め作業。働いた工賃で、自分の手で詰めた商品を買いに行くのを楽しみにしている利用者さんもいらっしゃるとのこと。
生活介護事業
日常生活や創作活動に介護が必要な方が通う施設です。軽作業も行っていて、失敗してもやり直せる作業を選んでいます。
絵が得意な利用者さんが描いた線画に、他の利用者さんが色を塗ることもあります。はみ出しても作品になるように職員が工夫しています。作品はバッジやブローチにして、事業所がある商店街のお祭りで販売したりもしています。お祭りでは、生活介護の利用者さんがダンスを発表することもあって、地域との交流も大切にしています。
お祭りなどで販売している作品は、色とりどりで個性豊か。見ているだけで楽しくなる。
ふくチャレで職場体験を受け入れたきっかけや理由はなんでしたか?
うちは東京都福祉局の「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言事業(※1)」 に参加していることもあって、外部とのつながりをもっと広げたいなって思っていました。いろんな人に出入りしてもらって、どんなことをやっている事業所なのか知ってもらえるのがいいなと思ったんです。
ただ、ボランティアを受け入れたい気持ちはあったんですけど、いきなり募集するのは難しいし、誰が来るかわからないと困るじゃないですか。だから、ふくチャレはその第一歩としてすごくいい仕組みだと思いました。
ふくチャレの参加者にはどんな業務を体験してもらっていますか?
いきなり負担の大きい仕事はお願いしません。基本は利用者さんとのコミュニケーションです。新しい人が来て優しく声をかけてくれると、利用者さんもすごく嬉しいんですよ。閉じこもりがちな人も、話しかけられると表情が変わります。
散歩に一緒に行ってもらうこともあります。うちでは地域活動の一環として町のゴミ拾いを続けているんですが、それに同行してもらうこともあります。地域の方から「いつもありがとう」と声をかけてもらうと、利用者さんもとても嬉しそうです。
安全面にも配慮しています。参加者の方には必ず職員が横についてサポートします。事故防止や急なトラブルに対応できるよう、研修を受けた職員がしっかりフォローしますので、安心して参加してもらえます。
ふくチャレに参加したことでどんな変化や効果がありましたか?
やっぱり一番は、外部とのつながりが強くなったことですね。外部の人が出入りすることで事業所の雰囲気が開かれた感じになり、さらに良くなりました。
あと、職員の新しく来た方への対応スキルが上がりました。対応を積み重ねることで職員が「将来の採用につなげたい」という意識で対応するようになって、コミュニケーション力や教える力も伸びていると思います。
先日体験に来てくださった60代の女性の方は、週1回で計5日間来てくださいました。生活相談員をされていたとのことで、現場は経験したことがなく、とてもよい体験になったと話してくださいました。大学生の方が体験に来てくださることもありますし、いろんな方が来てくださって、事業所を知っていただけるのはとてもありがたいです。
体験が終わったあとは、参加者の方にイベントのお知らせやボランティアのお声がけをするなどして、引き続きゆうあいセンターとつながってもらえるよう工夫しています。
(※1)働きやすい職場づくりに取り組むことを宣言する事業所の情報を学生や求職者の方に広く公表することで、福祉職場の人材の確保と定着を応援する東京都の制度。TOKYO働きやすい福祉の職場宣言
チラシの袋詰め作業。それぞれのペースで、丁寧に仕事を行っている。
仕事のやりがいや事業所の魅力は何ですか?
利用者さんがフレンドリーで、毎日楽しく、機嫌よく仕事に通えます。「ありがとう」と言われるとやっぱり嬉しいですね。最初に働いた施設では、1日に何度も言われて驚いたことを覚えています。
思いがけないハプニングや、ユーモアのあることを言って笑わせてくれる利用者さんもいるので、笑わない日はないくらいです。笑うことが多いから、いつも元気でいられる気がします。
この仕事は、相手の話をよく聞いてペースに合わせることが大事です。我慢強さや忍耐も身につきます。
あと、うちの職員は本当に優しいです。僕が一番優しくないくらいです(笑)。外部の関係者やご家族からも、職員の対応を褒めてもらったり、お礼を言われることが多いです。人の役に立ちたいという思いで人が集まっている職場です。
最後に福祉の仕事に興味がある方へメッセージをお願いします
やりがいは必ずあります。頑張った分だけ返ってくる仕事です。直接「ありがとう」と言われ、人の役に立っている実感があります。資格や得意なことはもちろん、家事や生活の経験も活かせます。
何より、この仕事は楽しいんです。毎日、一日一回は笑える場面があります。そんな職場、なかなかないと思います。人の役に立ちたい方は、ぜひ挑戦してみてください。誰かの役に立っていると実感できる仕事を選ぶことは、とても賢い選択だと思います。
事業所のドアを開けると、利用者さんが笑顔で話しかけてくれた。それぞれのペースで生き生きと活動している様子や、職員の方が優しく声かけをかけている姿がとても印象的だった。